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急性胃腸炎

急性胃腸炎とは、胃,小腸,および大腸の粘膜組織に何らかの原因で炎症が生じ、食欲不振、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、腹部不快感などの症状をおこすものです。急性とは、病気になって短期間、一般的には約1~2週間以内のものを急性と言います。原因にはさまざまなものがありますが、病原性微生物が腸管に侵入することによる感染性胃腸炎が最も多く、一般的に急性胃腸炎というと、感染性胃腸炎を指すことが多いです。

急性胃腸炎の原因

急性胃腸炎の原因は、感染性胃腸炎によるものが多く、薬剤やアレルギーが原因となることもあります。下記には、急性胃腸炎の原因として最も多い感染性胃腸炎について記述します。
感染性胃腸炎では、成因によって以下のように散発性胃腸炎、旅行者下痢症、抗生剤起因性腸炎、性行為感染症などがあります。

【1】散発性急性胃腸炎

散発性の急性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌のいずれかの感染が主な原因です。症状だけでは、ウイルス性、細菌性の鑑別は難しく、詳細な問診と採血検査で鑑別することが必要になることがあります。ウイルス性と細菌性の鑑別は的確な治療や周りへの感染予防のために必要です。例えば、抗生剤の投与は、ウイルス性胃腸炎ではかえって悪化させることがあり、一方で、細菌性では早めの抗生剤投与が必要になります。

(A)ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、アデノウイルスが代表的です。ロタウイルスは幼児の下痢症に多いウイルスです。これらのウイルスは抗生剤は効果なく、かえって抗生剤の投与は下痢を長引かせしまうなど悪影響を及ぼすことがあります。

ノロウイルス感染症

ノロウイルスは極めて感染性が高く、経口感染で感染します。ウイルスに汚染されたカキなどの魚介類の生食が原因であることが多いものの、乾燥にも強いなど、生活環境において長期生存が可能なウイルスのため、感染者の便、吐物、汚染された環境表面との接触、風呂やプールの共用などを介して容易にヒトからヒトに感染させやすく、時に家庭内、集団発生をきたすことがあります。さらに、ウイルスは症状が消失しても少なくとも1週間長い場合には1か月間便中に排泄されるため二次感染に注意が必要です。ノロウイルスの感染が疑われる場合は、受診時に消毒対策法を指導させていただきます。当院でノロウイルスの検査は可能ですが、3歳未満や65歳以上、持病があるなど一定の条件を満たす場合に保険が適用されます。健康な方は保険適用外となり、検査費用は自己負担となります。

(B)細菌性胃腸炎

原因となる細菌とその症状は多種多様ですが、主な原因菌はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌などがあります。細菌性胃腸炎が疑われた場合、病原菌の特定のため抗生剤投与前の便検査が必須です。便もしくは直腸スワブで培養検査を行い原因菌の特定を行います。

病原性大腸菌

大腸菌はヒトや様々な動物の腸管内に常在する菌ですが、さまざまな菌株があり、特定の菌株は下痢などの胃腸炎を引き起こし、病原性大腸菌と言われます。病原性大腸菌の中でも特に有名なのがO157などの腸管出血性大腸菌 で、ベロ毒素という毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こし、腸管出血性大腸菌と呼ばれます。2011年に焼肉屋でユッケを食べて5名の死者を含む181人が食中毒の原因となった事件を覚えていらっしゃる方もいると思いますが、腸管出血性大腸菌が原因でした。早期診断と治療が必要で、自己判断で下痢止めを服用したり、医療機関への受診が遅れると重症化することがあります。

カンピロバクター腸炎

汚染食品からの経口感染で感染し、発熱、下痢、腹痛などの症状が出るまでの期間(潜伏期間)は2日~10日前後です。教科書的には、春から夏にかけての発生が多いとされますが、当院での経験では通年にわたり患者が発生しています。原因食品は、鶏の生食とされますが、レバーなどの鶏肉やホルモン、レバーなどの牛肉も加熱不十分であれば感染源となります。通常は抗生剤で完治しますが、0.1%程度の確率で、手足をはじめとする筋力低下をきたすギランバレー症候群を合併することがあり、早期治療が望ましく、問診でカンピロバクター腸炎が疑われた場合は、便培養検査を行ったうえで経口抗生剤を投与しています。

【2】旅行者下痢症

旅行者下痢症は、旅行者が滞在先、あるいは帰国後に下痢症状が起こった状態です。通常は帰国後10日以内ですが、病原体によっては潜伏期が長いことがあるので、海外渡航歴を自ら問診で伝えることが重要です。当院の患者様では、アジアからの旅行者の割合が多いものの、先進国からの旅行者も多いです。複数の病原体が原因になることがあり、細菌ではO157 に代表される病原性大腸菌、赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ、チフスの順に多く、ランブルべん毛虫(ジアルジア症)や赤痢アメーバなどの寄生虫が原因となることがあります。重症化する病原菌もありますので、旅行者下痢症は、自宅で様子を見ずに必ずご来院ください。

【3】抗生剤起因性腸炎

抗生剤投与後に下痢を主症状として発生する腸炎です。抗生剤投与により腸管内の常在細菌叢が破壊され、特定の細菌が異常に増殖することで下痢が起こります。クロストリジウム・ディフィシル腸炎、MRSA腸炎などがあります。抗生剤投与により出血性大腸炎を起こすこともあり、抗菌薬起因性出血性大腸炎と呼びます。抗生剤投与後に下痢を起こしている方は是非当院にご相談ください。

【4】性行為感染症(STD)

アメーバ赤痢、ランブルべん毛虫、クラミジア、サルモネラ感染症などが性行為によって感染し、下痢などの症状を引き起こします。これらの感染症は通常の胃腸炎では頻度が低い感染症ですので診断に難渋することがあります。風俗店利用など、性行為感染症が心配な方、思い当たる方は遠慮なく申し出てください。

【5】その他の感染性胃腸炎

ウイルス性と細菌性以外にも急性胃腸炎を引き起こす感染症があります。ランブル鞭毛虫が原因のジルアジアや、オーシストという嚢包体に汚染された水や植物を摂取することで起こるクリプトスポリジウムなど、寄生虫による感染症もあります。

急性胃腸炎の症状

急性胃腸炎の症状には、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などがあります。その他、腹部の張り、腹部膨満感、食欲不振を訴える方もいます。嘔吐や下痢により、脱水症状が起きると、小児であれば不機嫌になる、ぐったりした感じが強い、などの症状がみられるようになります。また、合併症を引き起こすこともあり、細菌の種類によっては、手足の動かしにくさ、血便、貧血、けいれん、意識障害などが発症することもあります。

急性胃腸炎の治療

市販薬を含めて安易に下痢止めを使用することは、腸管内容物中の病原性微生物やその毒素が停滞する時間が長くなるため原則禁止です。水分・糖分・ミネラルを適切に摂取しながら、脱水を避けることが必要です。吐き気が強く水分摂取がままならない場合、極少量ずつ、頻回に水分摂取をすることが大切です。

口から水分が摂取できず、脱水の程度が強い場合には、点滴による水分補給を行います。

当院における検査・診断・治療の特徴

通常、急性胃腸炎では、症状や診察のみ急性胃腸炎と診断し、検査なしで投薬加療されることもありますが、上記の通り、多様な原因で胃腸炎を起こすことが多く、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎では治療も異なります。当院では、適切な診断、治療のために、ご来院された患者様には詳細な問診診察の後、採血検査などの検査をお勧めし、迅速かつ的確に診断し、治療をしていきます。

  • 当院では1時間で採血結果がわかるため、細菌性、ウイルス性の鑑別や脱水などの有無などを的確に判断することで適切な治療につながります。
  • 点滴治療も可能なリカバリーベッドを備えておりますので点滴が必要な方には点滴加療が可能です。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎では、成因によって以下のように散発性胃腸炎、旅行者下痢症、抗生剤起因性腸炎、性行為感染症などがあります。

散発性胃腸炎(散発性下痢症)

散発性の急性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌のいずれかの感染が主な原因です。症状だけでは、ウイルス性、細菌性の鑑別は難しく、治療も詳細な問診と採血検査

①ウイルス性(感染性)胃腸炎

ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、アデノウイルスが代表的です。ロタウイルスは幼児の下痢症に多いウイルスです。これらのウイルスは抗生剤は効果なく、かえって抗生剤の投与は下痢を長引かせしまうなど悪影響を及ぼすことがあります。

ノロウイルス感染症

ノロウイルスは極めて感染性が高く、経口感染で感染します。ウイルスに汚染されたカキなどの魚介類の生食が原因であることが多いものの、乾燥にも強いなど、生活環境において長期生存が可能なウイルスのため、感染者の便、吐物、汚染された環境表面との接触、風呂やプールの共用などを介して容易にヒトからヒトに感染させやすいため、時に家庭内、集団発生をきたすことがあります。さらに、ウイルスは症状が消失しても少なくとも1週間長い場合には1か月間便中に排泄されるため二次感染に注意が必要です。ノロウイルスの感染が疑われる場合は、受診時に消毒対策法を指導させていただきます。当院でノロウイルスの検査は可能ですが、3歳未満や65歳以上、持病があるなど一定の条件を満たす場合に保険が適用されます。健康な方は保険適用外となり、検査費用は自己負担となります。

②細菌性胃腸炎

原因となる細菌とその症状は多種多様ですが、主な原因菌はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌などがあります。

病原性大腸菌

大腸菌はヒトや様々な動物の腸管内に常在する菌ですが、さまざまな菌株があり、特定の菌株は下痢などの胃腸炎を引き起こし、病原性大腸菌と言われます。病原性大腸菌の中でも特に有名なのがO157 で、O157 大腸菌はベロ毒素という毒素を産生し、する種類の株はO157 ノロウイルスは極めて感染性が高く、経口感染で感染します。ウイルスに汚染されたカキなどの魚介類の生食が原因であることが多いものの、乾燥にも強いなど、生活環境において長期生存が可能なウイルスのため、感染者の便、吐物、汚染された環境表面との接触、風呂やプールの共用などを介して容易にヒトからヒトに感染させやすいため、時に家庭内、集団発生をきたすことがあります。さらに、ウイルスは症状が消失しても少なくとも1週間長い場合には1か月間便中に排泄されるため二次感染に注意が必要です。ノロウイルスの感染が疑われる場合は、受診時に消毒対策法を指導させていただきます。

カンピロバクター腸炎

汚染食品からの経口感染で感染し、発熱、下痢、腹痛などの症状が出るまでの期間(潜伏期間)は2日~10日前後です。教科書的には、春から夏にかけての発生が多いとされますが、当院での経験では通年にわたり患者が発生しています。原因食品は、鶏の生食とされますが、レバーなどの鶏肉やホルモン、レバーなどの牛肉も加熱不十分であれば感染源となります。通常は抗生剤で完治しますが、0.1%程度の確率で、手足をはじめとする筋力低下をきたすギランバレー症候群を合併することがあり、早期治療が望ましく、問診でカンピロバクター腸炎が疑われた場合は、便培養検査を行ったうえで経口抗生剤を投与しています。

旅行者下痢症

旅行者下痢症は、旅行者が滞在先、あるいは帰国後に下痢症状が起こった状態です。通常は帰国後10日以内ですが、病原体によっては潜伏期が長いことがあるので、海外渡航歴を自ら問診で伝えることが重要です。当院の患者様では、アジアからの旅行者の割合が多いものの、先進国からの旅行者も多いです。複数の病原体が原因になることがあり、細菌ではO157 に代表される病原性大腸菌、赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ、チフスの順に多く、ランブルべん毛虫(ジアルジア症)や赤痢アメーバなどの寄生虫が原因となることがあります。重症化する病原菌もありますので、旅行者下痢症は、自宅で様子を見ずに必ずご来院ください。

抗生剤起因性腸炎

抗生剤投与後に下痢を主症状として発生する腸炎です。抗生剤投与により腸管内の常在細菌叢が破壊され、特定の細菌が異常に増殖することで下痢が起こります。クロストリジウム・ディフィシル腸炎、MRSA腸炎などがあります。抗生剤投与により出血性大腸炎を起こすこともあり、抗菌薬起因性出血性大腸炎と呼びます。抗生剤投与後に下痢を起こしている方は是非当院にご相談ください。

性行為感染症(STD)

アメーバ赤痢、ランブルべん毛虫、クラミジア、サルモネラ感染症などが性行為によって感染し、下痢などの症状を引き起こします。これらの感染症は通常の胃腸炎では頻度が低い感染症ですので診断に難渋することがあります。風俗店利用など、性行為感染症が心配な方、思い当たる方は遠慮なく申し出てください。

その他の感染性胃腸炎

ウイルス性と細菌性以外にも急性胃腸炎を引き起こす感染症があります。ランブル鞭毛虫が原因のジルアジアや、オーシストという嚢包体に汚染された水や植物を摂取することで起こるクリプトスポリジウムなど、寄生虫による感染症もあります。

急性胃腸炎の症状

急性胃腸炎の症状には、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などがあります。その他、腹部の張り、腹部膨満感、食欲不振を訴える方もいます。嘔吐や下痢により、脱水症状が起きると、小児であれば不機嫌になる、ぐったりした感じが強い、などの症状がみられるようになります。また、合併症を引き起こすこともあり、細菌の種類によっては、手足の動かしにくさ、血便、貧血、けいれん、意識障害などが発症することもあります。

当院における検査・診断の特徴

通常、急性胃腸炎では、症状や診察のみ急性胃腸炎と診断し、検査なしで投薬加療されることもありますが、上記の通り、多様な原因で胃腸炎を起こすことが多く、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎では治療も異なります。当院では、適切な診断、治療のために、ご来院された患者様には詳細な問診診察の後、採血検査などの検査をお勧めし、迅速かつ的確に診断し、治療をしていきます。

  • 当院では1時間で採血結果がわかるため、細菌性、ウイルス性の鑑別や脱水などの有無などを的確に判断することで適切な治療につながります。
  • 細菌性胃腸炎が疑われた場合、病原菌の特定のため抗生剤投与前の便検査が必須です。便もしくは直腸スワブで培養検査を行い原因菌の特定を行います。
  • 当院では便を用いたノロウイルスの検査は可能です(通常保険適応となりにくく自費診療となります)。
  • 腸管出血性大腸菌が疑われる場合には、ベロ毒素と呼ばれる毒素を検査することもあります。

大腸癌と大腸ポリープ

大腸がんは、大腸(結腸と直腸)に発生する癌です。初期には症状がほとんどないことが多いですが、進行すると腹痛、便秘、血便、体重減少などの症状が現れます。早期発見が重要で、大腸内視鏡検査による定期的な検査が推奨されています。

大腸がんは日本人に最も多いがんの一つで、早期発見可能です。

日本における大腸癌の患者数は増加傾向にあります。2020年には約147,725例が診断され、2023年には約53,131人が大腸癌で亡くなっています。2020年の1年間にがんと診断された患者のうち、大腸がんは男性では第2位、女性では乳がんに次いで第2位となっています。また、2023年の年間大腸がん死亡数は5万人を超え,女性では大腸がん死亡数が第1位、男性では肺がんに次いで第2位となっています。これほどまでに日本人に多い大腸がんですが、多くの大腸がんは癌になる前に発見可能で、早期に発見できれば治る病気です。

がん罹患数の順位(2020年)
1位 2位 3位 4位 5位
総数 大腸 乳房 前立腺
男性 前立腺 大腸 肝臓
女性 乳房 大腸 子宮
がん死亡数の順位(2023年)
1位 2位 3位 4位 5位
男女計 大腸 膵臓 肝臓
男性 大腸 膵臓 肝臓
女性 大腸 膵臓 乳房

最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計]より

大腸がんの危険因子と大腸内視鏡検査が推奨される人について

「過量のアルコール」「肥満」「運動不足」が大腸がんの関連性は日本人でも確実、もしくはほぼ確実とされ、「加工肉」についても大腸がんの危険因子と言われています。一方、「赤身肉」、「食物繊維」、「カルシウム」を多く摂る人は大腸がんが少ないとされています。
大腸内視鏡検査の良い適応は、①検診便潜血反応陽性(2回のうち1回でも陽性)、②血便、③便通異常(便が細い、便秘が悪化するなど)、④貧血、⑤腹痛、⑥体重減少・腹部腫瘤などです。これに加えて,大腸がん家族歴がある方や上述したリスク要因を持つ方は、積極的に大腸内視鏡検査を受けることが望ましいと考えます。
大腸内視鏡による大腸がんスクリーニング検査は、大腸がん罹患・死亡を抑制することが報告されており、上記症状がなくても、大腸がんが増え始める50歳以降は、定期的な大腸内視鏡検査をお勧めしております。

大腸ポリープについて

大腸ポリープのうち、大腸腺腫は大腸の内壁にできる良性の腫瘍です。大腸がんの多くは「腺癌」ですが、これは、腺腫が癌化したものです。特に大きさが1センチ以上になると悪性化する可能性が高まります。
その他、sessile serrated lesion (SSL)と呼ばれるタイプのポリープも、大腸腺腫ほどではありませんが、がん化する病変です。SSLは隆起せずに拡がるタイプの腫瘍ですので、腺腫より発見が難しいタイプのポリープです。これらのポリープは無症状のことが多く、定期的な大腸内視鏡検査で発見されることが一般的です。

大腸内視鏡による切除法について

大腸腺腫の治療には以下の方法があります:

  • Cold forceps polypectomy(CFP):JUMBO鉗子を用いた切除方法。当院では4ミリ程度小さなポリープ切除に用いています。
  • Cold Snare Polypectomy(CSP):電気を使わずにスネアで腺腫を切り取る方法で、出血のリスクが低く、回復が早いとされています。
  • EMR(内視鏡的粘膜切除術):腺腫の下に液体を注入して持ち上げ、その後スネアに通電し切り取る方法です。
  • ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術):腺腫周囲の粘膜を切開し、粘膜下層ごと腺腫を剥離する方法です。
    cold Snare Polypectomy(CSP)とcold forceps polypectomy(CFP)は、研究により後出血・穿孔などの偶発症が極めて少ないことが示されている方法で、当院では、ポリープ切除においてCSPとCFPを採用しています。

当院の腺腫発見率(ADR)は開院1年で62%

大腸内視鏡検査における医療の質(quality indicator)の指標には、腺腫発見率(adenoma detection rate:ADR)が有用で、ADRが高いことは大腸がん死亡率減少に寄与するとされます。自覚症状のない中間危険度群における推奨ADRは男性30以上,女性20以上ですが、当院の開院から1年のADRは62%と高い成績を得ています。この高いADRは最新の内視鏡機器を用いて安全かつ正確な大腸内視鏡検査を行なっていることが主な要因と考えます。大腸がんの前がん病変である腺腫性病変を確実に見つけ、ポリープ切除を行うことはとても有益です。

潰瘍性大腸炎(潰瘍性大腸炎やクローン病など)

潰瘍性大腸炎とクローン病とは?潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じる難病指定の疾患です。
潰瘍性大腸炎は、直腸(肛門付近)から大腸をさかのぼるように炎症が連続性に続くことが特徴で、病気の範囲によって、直腸炎型、左側結腸型、全結腸型に分かれます。症状は一般的に、下痢、粘液便や血便が続くことですが、炎症の範囲や程度によって異なります。重症になると大腸全摘術が必要になっていましたが、近年の治療薬の進歩により内科的な治療で病勢のコントロールが可能になっています。

クローン病(Crohn‘s disease)

クローン病は、口から肛門に至る全消化管全体に炎症を引き起こす病気です。主に病変を認める箇所は、小腸・大腸、肛門です。潰瘍性大腸炎とは異なり、病変は連続性でなく、とびとび(非連続性)に生じるのが特徴です。クローン病の症状は、病変の部位や重症度によって症状は異なりますが、下痢や腹痛、発熱や体重減少、栄養不良などの全身症状もみられます。また、肛門部には腫れや痛みが生じることもあります。クローン病潰瘍性大腸炎と違い腸の粘膜表層だけでなく、深い部位まで炎症が及ぶため、時に深い潰瘍を作り、腸が狭窄したり、腸管に穴があいたり(穿孔)、腸の外に膿がたまったり(膿瘍)、肛門周囲の皮膚や他臓器とつながったトンネルを作る(瘻孔)などの合併症を起こし外科手術を要することもあります。このような合併症を起こさないためにもしっかりと炎症を抑えることが大きな治療目標となります。

潰瘍性大腸炎クローン病は厚生労働省の難病に指定されている疾患で、完治が難しく定期的な通院と適切な治療が重要です。いったん炎症が治まってもぶり返す(再燃と呼びます)ことが多いですが、近年の目まぐるしい内科的治療の進歩により、適切な治療を適切なタイミングで行えば、多くの患者様は症状が改善し、落ち着いた状態(寛解と呼びます)を維持することが可能です。それでも寛解と再燃を繰り返し、時に炎症が再燃し、入院を余儀なくされることもあります。

当院における潰瘍性大腸炎治療の特徴

当院は、潰瘍性大腸炎(IBD)の治療を積極的に行なっているクリニックです。患者様の状態に応じて、生物学的製剤を含む先進的な治療を行っています。

①粘膜治癒を目標とした治療

潰瘍性大腸炎クローン病は完治することがない疾患です。これまでは症状を抑えることが治療の目標でしたが、それでは再燃しやすいことがわかっています。最近では、内視鏡的にも炎症が完全に消失した「粘膜治癒」を達成すると、再燃率を低下させるだけでなく、入院率、手術率、発がん率も低下させることができるとわかっています。当院での潰瘍性大腸炎の治療は、この粘膜治癒の状態を長期間維持することを目標としています。
具体的には、生物学的製剤を含めた最新の治療をおこなっています。エンタイビオ点滴など院内で点滴注射をうけることも可能で、点滴ベッドでリラックスして治療をうけることができます。

②患者様のQOL、ワークライフバランスに配慮した治療

IBD患者さんは働き盛りの世代で発症することが多い難病です。平日通院が困難で、そのために治療が中断され再燃してしまうケースも多いのが実情です。当院では、土曜日のみならず、日曜日も月2回開院しており、一人でも多くの患者様にワークライフバランスを崩すことなく、専門診療を受けて頂けることを目指しています。また、もし再燃して入院が必要になった場合も、IBD診療で有名な慶應義塾大学病院をはじめ、多くの病院と緊密に連携していますので安心です。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)は、慢性的(通常6か月以上)に腹痛を伴う下痢や便秘などの排便異常をきたす患者のうち、腸に腫瘍や炎症などの異常がない場合を過敏性腸症候群と診断します。患者によって原因は様々ですが、ストレスは主要な原因です。ストレス負荷がIBS患者の症状、大腸運動に変化をおこすことが研究で分かっており、このような脳と消化管の機能的関連を脳腸相関(Brain-gut interaction)と呼んでいます。一方、最近の研究では腸内細菌叢が健常者と変化していることがわかっています。このように、自律神経バランスの乱れやストレス、食事内容の変化・乱れによる腸内細菌叢の変化など多様な要因が過敏性腸症候群を引き起こすことがわかっています。

過敏性腸症候群は症状から下記の3タイプに分けられます。

  • 下痢型:下痢が続き、時に排便の前後に腹痛を伴う
  • 便秘型:便が出にくく、腹部の張りや不快感がある
  • 混合型:痢と便秘を繰り返す

当院における潰瘍性大腸炎診断・治療の特徴

過敏性腸症候群は特徴的なお腹の症状や便通異常が生じるため、特別な検査をせずに問診だけで診断が下されることも少なくありません。しかし、過敏性腸症候群の診断には「腸に腫瘍や炎症の異常がない」お腹の症状や便通異常が症状に挙げられる場合、腸の病気が潜んでいる可能性もあるため、重症の場合や治療をしても症状が改善しない場合は血液検査、便潜血検査、画像検査、大腸内視鏡検査などの検査を行うことがあります。
過敏性腸症候群は重篤な病気ではありませんが、通勤、通学中に腹痛、下痢をきたし途中下車を余儀なくされる、会議中、授業中に腹痛を起こす、トイレが心配で旅行に行けないなど、生活の質(QOL)を著しく低下させます。
生活の質(QOL)が低下した状態がつづくと日常生活に支障がでますので、薬物治療を含めた治療の適応と考えます。最近では下痢型、便秘型ともに、新しい薬が開発され、QOLの改善に寄与しています。
さらに、最近の研究では腸内細菌叢が健常者と変化していることがわかっています。当院ではご希望される患者様に腸内細菌検査を施行し、食事や整腸剤のアドバイスを行っています。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは、胃部のもたれやみぞおちの痛みなどの症状が繰り返し感じることがあるのに、胃カメラなどの検査をしても胃の異常が見つからない病気です。機能性ディスペプシアはげっぷや胃酸の逆流など食道の症状と重なることがあります。

機能性ディスペプシアの症状と原因

食事によるもの
  • もたれ感:食べ物がいつまでも胃の中にとどまっているような不快感がある。
  • 早期飽満感:食事を開始してすぐに、胃がいっぱいになり普通量の食事が食べられない感じ
食事との関連がないもの
  • みぞおちの痛み:みぞおちに怒る不快な痛み
  • みぞおちの灼熱感:みぞおちに起こる熱を持ったような不快な症状。

昨今ディスペプシアの病因には、ストレスなどによる胃運動機能異常、脂肪分の多い食事、アルコール、たばこ、睡眠不足などの生活習慣の乱れ、などが挙がります。前述の過敏性腸症候群と併発することが多いです。

当院の機能性ディスペプシアの治療

機能性ディスペプシアと診断されるべき患者様は以前から多かったと思いますが、多くは「胃炎ですね」と診断され、胃炎の治療をされてしまっていたのが実情です。当院では、内視鏡検査などにより的確に機能性ディスペプシアと診断した上で、消化管運動機能改善薬を中心とした機能性ディスペプシアにより適した治療をおこなっております。

胃アニサキス症

胃アニサキス症は、アニサキスという寄生虫の幼虫が胃の粘膜に入り込むことで発生する感染症です。主に生の魚やイカ、イクラを食べることで感染しますが、私の経験では、デパートで購入したサバの押し寿司やサンマの塩焼きでもアニサキス症を発症している患者様がいます。

アニサキス症の症状

アニサキス摂取後、数時間以内に激しい上腹部痛、悪心、嘔吐、蕁麻疹を引き起こします。しかしながら症状は多彩で、ドックの内視鏡検査でも稀にアニサキスの虫体が見つかることがあります。なぜならば、アニサキス症はアニサキスに嚙まれたから痛いのではなく、アニサキスによる急性のアレルギー反応だからです。夜中に救急車を呼ぶ人と無症状の人の違いには、アニサキス虫体に対するアレルギー症状の強さ、すなわち過去の感染の有無が大きく関連しているからだと思われます。
アニサキス症の多くは胃アニサキス症ですが、ときに小腸の粘膜に入り込むことがあり、その場合は腸閉塞をきたすことがあります。

治療法

治療法の基本は上部内視鏡による除去です。アニサキス症は幼虫移行症といって、4~5日後には虫体は死んでしまいます。しかし、それまで苦痛を我慢することが難しいこと、ときに深い胃潰瘍ができてしまい治癒しにくくなることから考えると出来るだけ早いうちにアニサキスの虫体を除去することが望ましいです。当院では、アニサキスを疑う方には、胃カメラをすぐに検査できる体制が整っています。患者様は、生の魚、イカ、イクラを食べて数時間後の胃痛をきたした時には、ご飯を食べずにご来院頂ければと思います。 当院では、内視鏡でアニサキス除去後、胃薬(H2ブロッカー)と抗ヒスタミン薬を処方しています。
ちなみに、とある漢方胃腸薬がアニサキスを殺すという説が流布しているようですが、おそらくアニサキスを殺す効果も予防する効果もありません。当院にアニサキス症で受診された方のうち、2名が胃痛をきたしてその漢方薬を内服したものの、胃痛は収まらず内視鏡で除去しました。そのうち一人は、お寿司を食べる機会が多い方で、寿司を食べるごとにその漢方薬を飲んでいましたが、2回アニサキスにかかっています。

予防策

アニサキス症の予防には、70℃以上で加熱する、-20℃で24時間以上冷凍することでアニサキスは死んでしまいます。しかし、アニサキス症をおこしたあとしばらくの間は、死んだアニサキスでもじんま疹や胃腸症状をきたす方がいらっしゃいます。

結腸憩室症、憩室炎、憩室出血

結腸憩室は、結腸の壁が外側に突出し、ポケット状になった状態をいいます。結腸憩室はもともと白人に多いのですが、白人では左側結腸(S状結腸、上行結腸)に多い特徴があります。一方、日本人では、右側結腸に多かったものの、食生活の欧米化により、左側結腸に憩室が増えています。大半の大腸憩室は無症状で臨床上は問題になりませんが、しばしば炎症を起こす(憩室炎)、出血する(憩室出血)ことがあり、その際には早急な治療が必要となります。近年、大腸憩室炎や大腸憩室出血は増加傾向にあり、再発率も多いため、臨床上問題となることがあります。

結腸憩室炎

結腸憩室炎は、大腸の壁にできた袋ポケット状の憩室が炎症を起こす病気です。憩室は通常無症状ですが、便秘や細菌感染によって炎症が発生すると、腹痛、発熱、血便などの症状が現れます。大腸憩室炎の診断には、身体所見や血液検査をまず行い、確定診断には画像検査を行います。画像診断にはCT検査が最も有用です。当院では、近隣のがCT施設と連携し、短時間のうちに採血検査から画像検査、治療開始まで行っています。

結腸憩室出血

大腸憩室出血を含む急性下部消化管出血を疑った場合、下部内視鏡検査をおこなうことは、他の診断法に比べて、診断率、治療介入率が高く、推奨されます。当院では、結腸憩室出血が疑われる患者様には、まず血圧測定や採血などで出血の重症度を判定し、検査可能と判断すれば緊急的に下部内視鏡検査を施行しています。開院から1年間で3名の憩室出血患者様に対して下部消化管内視鏡検査を施行し、クリップ法により止血成功しています。

腹痛

腹痛といっても原因は多様で、消化器疾患(胃、大腸、小腸、肝臓、胆のう、膵臓、の疾患)だけでなく他の臓器の疾患(心・血管、腎、泌尿器、子宮、卵巣)であることがあります。

消化器疾患

消化器以外の疾患

  • 尿管結石
  • 膀胱炎、腎盂腎炎
  • 帯状疱疹
  • 子宮付属器炎、子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮外妊娠
  • 狭心症、心筋梗塞、腹部大動脈瘤
  • 肺炎、胸膜炎
  • 前立腺炎 など

腹痛の診断・治療のポイント

腹痛の診断には、その部位と症状の持続期間、強さと痛み方、痛みが増加・軽減する因子、随伴する症状(発熱、下痢、血便、血尿など)をもとに問診し、実際に身体所見をもとに診断を進めていきます。
診断確定のためには、採血、検尿、腹部レントゲンなどの必要な検査を行っていきます。当院では、診断に必要な採血検査は約60分で結果が出ますので迅速に診断することが可能です。
これらの疾患は、問診、痛みの部位や性質、随伴症状によってある程度推測することができます。腹痛が続く場合や激しい痛みがある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

腹痛の診断で最も重要なことは、腹痛の原因となっている病気の重篤性、緊急性を的確に判断することです。また、腹痛には、内臓痛、体制痛、関連痛があり、必ずしも痛む部位の臓器が腹痛の原因とは限りません。緊急処置を必要とする場合も少なくないことから、腹痛を我慢せず、ご来院ください。

悪心(吐き気、嘔気)、嘔吐

悪心(嘔気、吐き気ともいいます)は、胃の内容物を吐き出したいという不快感を指します。悪心嘔吐には、冷や汗や、徐脈、頻脈、一過性の血圧の変動が伴うことがあります。
悪心、嘔吐は、延髄という場所にある嘔吐中枢に刺激があり、そこに様々な刺激が加わることで悪心・嘔吐が起こります。嘔吐は嘔吐を誘発する刺激の起こる場所により中枢性か末梢性に分けられます。

中枢性嘔吐

頭部外傷、脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、片頭痛、脳炎、髄膜炎、神経性食不振症、うつ病、過度の恐怖、ストレス、薬剤性(モルヒネ,ジギタリス、抗菌薬、抗がん薬、降圧薬、アミノフィリン、コルヒチン、アルコールなど),重金属、ガス、肝性脳症(肝不全)、糖尿病性ケトアシドーシス、尿毒症、妊娠悪阻(つわり),妊娠中毒症、甲状腺機能亢進症、副腎不全など

末梢性嘔吐

消化器疾患

腹部各臓器の癌(胃癌、大腸癌、食道癌、肝癌、膵癌など)、Mallory-Weiss 症候群、胃食道逆流症(GERD)、急性胃炎、胃潰瘍、急性胃腸炎、腹膜炎、腸閉塞、胆石症、急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎

消化器以外の疾患

うっ血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、尿管結石、腎盂炎、中耳炎、メニエール病、動揺病(乗り物酔い)、緑内障、子宮付属器炎、月経症候群、更年期障害、肺炎・喘息などによる激しい咳など

下痢

下痢はその経過から、急性下痢と慢性下痢に分類され、慢性下痢は3週間以上の長期間続くものをさします。

急性下痢

感染性胃腸炎の多くはいわゆる急性胃腸炎が原因です。急性胃腸炎といってもその原因は多岐にわたり、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎では治療も異なります。市販薬を含めて安易に下痢止めを使用することは、腸管内容物中の病原性微生物やその毒素が停滞する時間が長くなるため原則禁止です。水分・糖分・ミネラルを適切に摂取しながら、脱水を避けることが必要です。①脱水症状、②血便、③1日6回以上の下痢、④2日以上続く場合、⑤強い腹痛、⑥発熱 の症状をきたす場合はご来院することを強く勧めます。詳しくは、急性胃腸炎をご参照ください。

慢性下痢

慢性下痢をきたす代表的な疾患は以下の通りです。

過敏性腸症候群は最も頻度の高い疾患ですが、その診断は他の下痢をきたす疾患の除外がまず必要です。潰瘍性大腸炎などの潰瘍性大腸炎は日本においてもご来院することを強く勧めます。

便秘

便秘とは、排便がうまくいかず便が腸管内に停留する状態です。便秘の自覚には個人差が大きく、排便が3日に一回でもいわゆる快便であれば便秘とはいいませんし、若い女性などは毎日排便がないと便秘だと感じることがあります。便の量や回数は食事内容や食事量によっても変化するため、はっきりと定義することは困難ですが、一般的には以下の症状参考にします。

  • 排便困難が持続する。
  • 排便回数の低下(1週間の排便回数が3回未満が目安)
  • 残便感。
  • 1回の排便量が減少する
  • 排便に時間を要する。
  • 便がかたく排便痛を伴う。
  • 便が水様便や軟便であっても排便回数の減少を認めた場合には便秘と呼びます。

便秘の分類

便秘には急性、慢性があり、さらには以下のように分類されます。

機能性便秘

過敏性腸症候群とそのほかの機能性便秘

器質性便秘

大腸癌などによる腸閉塞、腸ねん転、腹部術後の癒着、腸重積、炎症性の狭窄(クローン病など)。

症候性便秘

腹膜炎、胆のう炎、急性膵炎などの全身疾患は急性便秘の原因で時に緊急性を要します。その他、脳梗塞後遺症、パーキンソン病などの神経内科的疾患、甲状腺機能低下症や糖尿病などの内分泌・代謝疾患、皮膚筋炎などの膠原病

薬剤性便秘

鎮咳薬、抗コリン薬(パーキンソン病、消化性潰瘍、過活動膀胱、呼吸器疾患の治療薬)、抗うつ薬、抗不安薬、鉄剤など

便秘の診断・治療のポイント

上記のうち、一番頻度が高いのは機能性便秘ですが、機能性便秘の診断には、まず大腸癌を含めた器質性便秘、症候性便秘、薬剤性便秘を鑑別・除外する必要があります。自己判断で便秘薬を使用することは避けなければいけません。詳細な問診や大腸内視鏡検査を含めた検査が必要です。
便秘に対する治療薬には、浸透圧性下剤である酸化マグネシウムとセンナを中心とした刺激性下剤が長く使われてきましたが、最近では作用機序が異なる多くの新規便秘薬が登場しています。新規薬剤の登場により、それぞれの患者様に最適な治療薬をみつけることができるようになってきました。当院では、患者様に最適な治療を提供しています。ぜひご来院ください。

血便・下血・吐血

「血便」は、肉眼的に明らかな血液が便に付着・混入する、あるいは血液がそのまま排泄される状態をいいます。また、「下血」とはは胃などの上部消化管からの出血で、胃酸に酸化された血液が黒色便として肛門として排泄されるものです(出血量によっては黒色ではなく赤い血の場合もあります)。時に、緊急を要する病気のことが多いので、様子をみずに血便や黒色便をみたら受診しましょう。

肉眼的血便とは違いますが、検診の便潜血検査も陽性になった場合(たとえ2回のうち1回でも陽性の場合)は、必ず受診しましょう。

血便をきたす疾患:主に下部消化管の病気

代表的な疾患は以下の通りです。大腸内視鏡検査は血便をきたす疾患を診断するうえで最も有用な検査です。

下血(黒色便)をきたす疾患:主に上部消化管の病気

慢性下痢をきたす代表的な疾患は以下の通りです。

  • 胃十二指腸潰瘍
  • 食道静脈瘤 など

肉眼的な血便、下血をきたす疾患はいずれも緊急性を要します。様子を見ずに受診しましょう。

食欲不振・早期腹満感

食欲不振とは、食欲が低下あるいは消失した状態です。その他、少量の食事で腹満感を感じる「早期腹満感」とよび、食欲はあるものの、食べると苦痛を伴うため食事を摂取しない状況を「恐食症」とよびます。食欲不振をきたす疾患の代表的なものを以下に挙げます。

生理的要因

ストレス時、運動不足、過労・睡眠不足、妊娠

消化器疾患

  • 口内炎などの口腔疾患
  • 急性胃腸炎
  • 胃食道逆流症(GERD),胃炎、胃・十二指腸潰瘍
  • 悪性腫瘍(食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、など)
  • 胃切除後
  • 慢性便秘、Crohn病、濃瘍性大腸炎、腸閉塞
  • 肝硬変、肝癌などの肝疾患、胆道炎、胆石(胆結石、総管結石)。道などの胆道疾患、膵炎、膵癌などの膵臓疾患
  • 機能性ディスペプシア

消化器以外の疾患

  • 気管支喘息、肺気腫、肺癌などの呼吸器疾患
  • うっ血性心不全,心筋梗塞などの循環器疾患
  • 脳出血。脳炎、脳腫瘍、頭部外傷、Parkinson 症候群などの脳神経疾患
  • 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患
  • 糖尿病性ケトアシドーシス,ビタミン欠乏症などの代謝性疾患
  • 腎炎、腎不全(尿毒症)などの腎疾患
  • 不振症、うつ病(仮面うつ病)、統合失調症などの精神疾患
  • アルコール依存症
  • 悪性腫瘍
  • 薬物副作用(アルコール中毒、ニコチン中毒、抗がん薬など)の副作用
  • 覚せい剤中毒、工業用薬物中毒

診断の進め方 まず、食欲不振に加え、早期満腹感や恐食症の有無などを問診していきます。食欲不振を訴える場合、それが生理的要因に起因するのか、病的要因に起因するのか上記の疾患などを鑑別していきます。必要に応じて、採血や内視鏡検査を行っていきます。